とにかく怖いのだけれど、スロットルを捻るとまるで羽が生えたような気分になる。それがとにかく楽しかった。1週間も走り回ると慣れて、それからいろんな場所へ行った。これまで自転車で散々通った道も、カブで走ると特別な時間になった。カブで走るということは、もはやただの移動ではなかった。周りの景色がこれまでとまるで違うように思えた。怖いもの知らずで、真冬に片道80kmぐらい走ったこともあった。今であればそんな計画を考えようとも思わない。
その後、すぐさま中型二輪を取得し、リトルカブは下取りに出されることになった。そして大型免許も取得し、いろんなバイクを乗継いで、今に至っている。もはや馬力は120馬力のマシンとなり、初めてリトルカブに乗った時とはまるで違う世界に身をおいている。それでも、時たま懐かしのリトルカブの姿を目にすると、前に進むだけでも怖かったあの頃の気持が、今でも鮮明に蘇ってくるのである。